「三輪の誘惑|ジャイロXと私の物語」第一話:出会いは“きったない子”だった

「三輪の誘惑|ジャイロXと私の物語」第一話:出会いは“きったない子”だった GYRO
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こんにちは、fukumomo3_Photo(@fukumomo6_com)です。

2ストロークエンジン、オイルポンプなし、混合燃料仕様。

出かける前に燃料を作る儀式が必要で、長距離を走るならオイルまで携帯しなければならない。

楽しいが、時には億劫になることもある。

そんな理由で、新たな相棒を探し始めた。

「セル付き」「4スト」「荷物が積める」「冬の雪道も走れる」。

カブやビジネスバイクが候補に上がるが、どうもしっくりこない。

そんな時、ふと浮かんだのが“ピザ屋のバイク”だった。

「三輪の誘惑|ジャイロXと私の物語」

第一話:出会いは“きったない子”だった

 ガレージにはスクーターが一台ある。そのスクーターは、125CCの2ストロークエンジンと強靭なフレームをさらに厚みのある鉄板で覆った昭和39年に富士重工が開発したスクーターだ。このスクーターは2ストロークエンジンを搭載していている。しかし、オイルを送るためのポンプが備え付けられていないため混合燃料となる。混合燃料とはガソリン25に対しオイルを1混ぜ合わせたものである。このことにより乗る前に混合燃料を作るという作業が必要となり、さらには長距離を走る場合はオイルを持ち運ばなければならない。これは古い2ストロークのバイクに乗るための楽しい儀式なのだ。しかしながらこの作業を儀式として楽しめない日もある。楽しめなくなると当然楽しくないので気軽に楽しめるバイクを探すこととなったのだ。

 私の条件はこうだ。「セル付きで4ストロークエンジンを搭載しいるスクーター」この条件を満たすスクーターは探さなくとも、今時のスクーターは全車種セル付きで4ストロークエンジンである。しかしながら私はひねくれているので、いやかなりひねくれているので更なる条件をだす。「大きく安定した荷台が前後に装備されパワーがあり冬の雪道も走れるスクーター」こうなるとわりと絞られてくる。スクーターなら荷台が前後にあるのは当然なのだが、大きく安定したとなると厄介だ。まず最初に頭に浮かぶのは当然HONDAのカブだろう。カブならスタッドレスタイヤも販売しているので冬の雪道も走れる。しかしこの時の私には却下される。理由は、私の中で出来上がっている未来予想図に出てくるバイクではなかったからだ。ぼんやりと未来予想図の中のバイクは前後に木の大きな箱がついていて花屋さんが花を運ぶのに使っている可愛いバイクのイメージであった。このときひらめいた。花屋さんが花を運ぶイメージといえばピザ屋さんがピザを運ぶバイクがあるではないか、このバイクの荷台なら大きなピザが運べるし、しかもボックスタイプの箱付きで屋根まで付いている。早速ネットで「三輪バイク ピザ宅配」と検索した。

 「ジャイロキャノピー」と「ジャイロX」この二台が候補にあがる。ジャイロキャノピーはピザ屋さんなどがおもに使っている三輪バイクであり荷台に大きなボックスが備え付けられている。かわってジャイロXは、屋根もなく荷台に大きなボックスもなく見た目は普通の三輪バイクである。しかしジャイロXにはフロントにも荷台があった。このことが私の未来予想図の可愛いバイクのイメージに当てはまる。ヤフオクで「ジャイロX」と検索するとかなりの数のジャイロXがあがった。いままでピザ屋さんのバイクとしかみていなかったバイクに興味が湧いたのでいろいろ調べる。するとジャイロには、TD01という2ストロークの型とTD02の4ストロークの型があることがわかった。私は2ストロークが好きなのだが、今回の条件は「セル付きで4ストロークを搭載しているスクーター」である。しかし2ストロークも捨て難かったので両方を視野にいれヤフオクなどのオークションサイトをめぐった。いろいろ調べると見えてくる。2ストロークのジャイロのほとんどは誰かしらの手が加わり原型をとどめないジャイロまであるようだった。逆に4ストロークのジャイロはピザ屋さんが仕事で使用し、かなりの距離を走った子たちばかりだった。そう、どちらも状態の良い子がいないのだ。

 状態の良い子がいないのであれば、連れてきて状態をよくして私色に染めればいいと考えを変える。考えを変えれば選択も早い、4ストロークのTD02で改造されていなくウインカーなどの保安部品が割れていないなどのことを条件に探すとすぐに見つかった。ジャイロは商用で使用されていた子が多いのでかなりの数が出回っている。色白で距離もかなり走っている子に目が止まった。画像をよく確認する。説明文を読む。「ビビィ」っとくる。いつものことだが、「ビビィ」っとくる子しか買わないことにしている。安いから・きれいだから・ちかいからなどの理由はいらない、ただ私のシステム1が起動したら買うだけだ。私がシステム1を強く意識する理由は、システム2を使うと買わないといった判断をするか、自分が本当に欲しかったバイクを選択しないからだ。出品者にジャイロを購入したいとメールを送る。数回のメールで陸送の手配や日程など、およそ決まったので、自分の「ビビィ」を信じて即決ボタンを押す。現車確認をしないで購入するのは今回の子が初めてだ。しかし、いままで私の「ビビィ」が外れたことが一度もないので今回の子もうちの子になると信じている。本当のところは、決めた子を正解にしているだけだといった話もあるが、これは皆に内緒だ。

 陸送の手配は私の役目なので適当な陸送屋さんを手配する。陸送屋さんからのメールでデポ入れの時間が決まった。出品者に頼んでデポにバイクを入れてもらう。これであとは私の街のデポに彼女が陸送されてくるのをを待つだけとなる。二週間ほど待っただろうか、陸送屋さんからメールが届く。ワクワクしながら軽バンを走らせる。大きな運送屋さんの倉庫が陸送のデポとなっていた。受付で書類を確認してもらい、陸送されてきた主人を待つバイクを観察すると中にはとても珍しいバイクやかなり大きく高価なバイクもならんでいた。すると、その大きく高価なバイクの横に私の彼女が待っていた。しかし誠に申し訳ないのだが第一印象は「うわ・・きったない子っ」だった。早速陸送屋さんの倉庫の人に手伝ってもらいながら意外と重たい「きったない子」を強引にミラーをたたんだり、角度を変えたりして押し込んだ。軽バンのミラー越しに見える「きったない子」のイメージは「前後に可愛いカゴをつけて俺色に染まった彼女」となっているので、終始「ニヤニヤ」しながらの帰り道である。「どんな服を着せてあげようか?」「アクセサリーは白色がいいかな?」「靴はアクセサリーに合わせて白だよね〜!」などいろいろと妄想する。

 楽しい妄想をしながらの帰り道は同じ県内のデポからなので短い時間だった。ガレージに到着して早速「きったない子」を軽バンから丁寧におろす。軽バンからおりて太陽の光にあてられた「きったない子」は、劣化したプラスチッックの表面があらわにされ、さらに汚さを増して「すっごくきったない子」に変身した。この「すっごくきったない子」を大変身させる妄想をしながら、ガレージの作業場を片付ける。スペースの開いた場所に「すっごくきったない子」を座らせた。すると「すっごくきったない子」は、とても汚いが素材がいいのでよく見ると「かわいい」のだ。角度を変えて観察する。後ろから見る。少し傾けてみる。全体をみる。拡大して見てみる。「かわいい」と一言呟き「にやり」と笑う。私の「ビビィ」が「ビビビィ」に変わり腹の底からの「グググゥ」に変わった瞬間である。彼女にまたがり「待ってろ俺色に染めてやるから」と告げる。少し喜んだように見える彼女の横で似合う色の服を探した。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

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