「再会のバイアルス|TL125と私の物語」第一話:ヤフオクの向こうにいた『あの時のお前』

「再会のバイアルス|TL125と私の物語」第一話:ヤフオクの向こうにいた『あの時のお前』 TL125 K2
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こんにちは、fukumomo3_Photo(@fukumomo6_com)です。

ヤフオクを開き、検索欄に「TL125 バイアルス」と打ち込む。

そこに現れたのは、数台のバイアルス。

しかし、どれも「あの時のお前」ではなかった。

あの細身のフレーム、緑色のタンク、16歳の俺が跨っていたバイクと同じものは見つからない。

それでも毎日ヤフオクをチェックし続けた。

中古バイクの検索サイトも片っ端から漁った。

それから数ヶ月、ついに「あの時のお前に似た奴」が現れた。

「再会のバイアルス|TL125と私の物語」

HONDA-TL125-K2-バイアルス

第一話:ヤフオクの向こうにいた『あの時のお前』

 ヤフオクで古いバイクを探す。探す理由は、昔乗ってたバイクが今現在どのような状態で世の中を生きているのか気になったからだ。「TL125 バイアルス」と検索する。数台のTL125バイアルスが検索に上ったが「あのときのお前」ではなかった。それから毎日ヤフオクだけではなく中古バイクの検索サイトまで手当たり次第に「あのときのお前」を探す。しかし「あのときのお前」はみつからない。似たような奴はいるのだがあの時の緑色で細身のお前が見つからないのだ。数ヶ月たった頃だろうかヤフオクに「あのときのお前」とは肌色も違うし生まれた年も違う「あのときのお前に似た奴」が新着で登場した。さっそく説明文を読むと説明に「不動バイク・書類あり・錆多し」との記載があった。ヤフオクなどで不動バイクと記載するのは出品者の逃げ道なので実際のところ動くか動かないかなどわかったものではない。ジャンクと記載されたパソコン機器と似ている。気になったので画像を細かく拡大して見てみた。「ビビィ」っと私の左肩に何かが走る。ちなみにヤフオクなどでバイクなどを購入する時に私が気を付けていることは、画像が全方向から撮影されているかである。動画ががあれば尚良い。

 「ビビィ」っときたら即行動である。出品者に「はじめまして、fukumomo3_Photoです。出品されているTL125バイアルスを現車確認したいと思っております。現車確認できるのであれば都合の良い日時と時間帯を教えていただけないでしょうか?」とを送る。翌日「週末の午前中ならいつでも良いですよ!」とうれしいメールが届いた。「では!今週末の午前中に参りますのでよろしくお願いします!」と返信する。さっそく軽バンの荷台から荷物をすべておろす。買う気満々の準備万端である。週の初めにメールのやり取りをしたので週末までまだ日があった。「あのときのお前に似た奴」の画像を何度も何度も見る。この時点で交換する部品や錆の状態など想像できる部分はすべて想像する。「あのときのお前」とは肌色も違うし年も少しだけ若いが「あのときのお前に似た奴」が次第に「あのときのお前」に見えてくるから不思議だ。そのような毎日を過ごしているとあっという間に週末が来た。

 小さくて細いが軽バンの荷台に積載できるかわからなかったので、フロントタイヤを外せるだけの道具を積んで出発だ。新潟から神奈川まで全線高速を使いターボも付いていない軽バンのアクセルをなるべく床まで踏まないよう「あのときのお前に似た奴」に会えるワクワクを制御しながら走る。小田原の峠ですれ違うバイクに手を振りながらひたすら走るとメールで教えてくれていた建物が見えてきた。近づくにつれて何台ものバイクが所狭しと放置されている。少しだけ不安を感じたが「あのときのお前に似た奴」に会える感情がそれを消す。到着すると目の前に「あのときのお前に似た奴」が点滴されているではないか、それもエンジンが始動されていてアイドリングしているのだ。嬉しい反面自分で不動だったバイクのエンジンを初始動させたかったので少しだけ残念に感じた。しかし「あのときのお前に似た奴」が目の前にいるのだ。まずは出品者に挨拶をして触って良いかと確認する。許可が降りたので、そっと手を握る。すると「ビビィ」が「ビビビィ」に変わりさらには「グググゥ」っと腹の底からワクワクなのかドキドキなのかわからない興奮が湧き上がる。「あのときのお前に似た奴」が「あの時のお前」に変わった瞬間だ。

 「今日連れて帰っていいですか?」と出品者に聞くと「書類もありますし大丈夫ですよ!」と良い返事がもらえたので、迷うことなくヤフオクの即決ボタンをタップした。「あのときのお前」を軽バンの荷台に乗せる。乗らなければフロントタイヤを外すつもりだったがギリギリ乗ってくれた。終始ニヤニヤしながらフロントサスペンションを沈ませラッシングで「あのときのお前」を固定する。そりゃそうだ「あのときのお前」に再会したのだから今の私は「今の俺」ではなく「あの時の俺」だからだ。「あの時の俺」は16歳なので、この場面をニヤニヤしないで冷静に作業ができるわけがない。そう「あのときのお前」が私を少年に戻してくれた瞬間だ。なんとかフロントタイヤを外すこともなく「あのときのお前」が荷台に乗ってくれたので、出品者にお礼の挨拶をして出発した。

 信号待ちのたび後ろをみて「あのときのお前」を確認する。なんど見ても「あのときのお前」は「あのときのお前」のままそこにいるのだが、心が16歳に戻っているので何度も何度も振り向きニヤニヤする。高速道路で振り向いてニヤニヤするのは危険なのでバックミラーを「あのときのお前」に合わせてミラー越しにニヤニヤしながら走る。行きは遠く感じた新潟から神奈川の道のりも、帰り道は「あのときのお前」と話をしながらだったのでとても早く感じた。楽しい時間はあっという間に過ぎ「あのときのお前」がこれから暮らすガレージに到着である。倒さないように慎重に「あのときのお前」を軽バンからおろす。ガレージハウス前に止めて眺める。半日ずっとニヤニヤしているので少しだけ頬が痛い。「あの時のお前」の細かいところを見る。楽しめそうなタンクの錆、オイル滲み、前足の不調などなどが発見できたので、嬉しくてさらに頬が痛くなる。点検整備は今後の楽しみにして、「あのときのお前」より先にガレージに住んでいる「ウサギ」の横に並んでもらう。ニヤニヤしながら「あのときのお前」のタンクをポンポンと叩く。まだまだ話したいことはあったが55歳の私に戻りガレージハウスに入った。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

fukumomo3_photo

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