[PR] 当サイトはアフィリエイト広告による収益を得ています。
こんにちは、fukumomo3_Photo(@fukumomo6_com)です。
2013年3月、名古屋の港。長距離の仕事から帰ると、駐車場で彼女が待っていた。
XLR250BAJA、名をBAJACO。
鹿児島から陸送され、ようやく私の元へやってきた。
ネットで見たときから、この名前で呼ぶと決めていた。
封筒には、オリジナルのキーが2本。
前のオーナーの愛情が伝わる。
「待たせたね、BAJACO」
そうつぶやき、キックペダルを踏み下ろす。
「ドドドド」一発始動。
エンジンの鼓動が、期待と興奮を掻き立てる。
こうして、新しい相棒との物語が始まった。
「単気筒の衝動|XLR250BAJAと私の物語」

第一話:待たせたね、BAJACO
XLR250BAJAと初めて出会ったのは2013年の3月だった。私が名古屋の港に住んでいた時にさかのぼる。1週間ぶりに長距離の仕事から帰る。その子は私の駐車場にちょこんと可愛らしく待っていてくれた。「その子」といったが名前は「BAJACO」とネットで探してみたときから決めてある。鹿児島から陸送ではるばる名古屋の港まできてくれたのだから丁寧に挨拶しないといけない。BAJACOの体を隅々まで舐めるように観察する。ネットの画像で見た通り美しい体をしている。足下をよくみると鹿児島のバイク屋のステッカーが貼ってある。はがしてもよかったがきっとBAJACOは嫌がるだろうと判断したのでそのままである。純正オリジナルのキーが2本封筒に入っていた。前の旦那に可愛がられていたことを物語る品だ。少しだけ嫉妬が芽生える。しかしその感情はBAJACOにまたがった瞬間消えた。身長170センチの私がまたがって体重をかけるのだが足先がかろうじて地面をとらえる。大事にされていたキーをBAJACOに挿入しキーをひねる。バッテリーレスのXLR250BAJAなのでキーをひねってもなにも点灯しないし反応はない。チョークを引きキックペダルを横に開き左足を支点に右足で圧縮上死点を探す。少し重たくなるところが上死点である。しかしいまいち久しぶりなので適当なところから思いっきり右足を下ろす。なんと「ドドドド」一発始動である。アクセルを若干開け気味にしながらチョークをゆっくりとおろしBAJACOに挨拶をした。
用意しておいたヘルメットを車から取り出し準備をする。準備をする間も「ドドドド」と小刻みに揺れながらアイドリングを刻んでいる。やはり私の「ビビビィ」は正しかったと改めて感じてニヤリと頬が上がった。ヘルメットを被りちょっと背の高いBAJACOにまたがる。クラッチを握りギアを1つ踏んで下げると「ゴン」と心地よいギアの噛む音が聞こえた。何度も何度もニュトラルから1速を繰り返し「ゴン」を楽しむ。私はこの音がたまらなく好きなのだ。散々楽しんだのでいよいよBAJACOと初めてのデートへ出かける。ちょっと短いクラッチレバーをゆっくりと放す。アクセルを絞るようにゆっくりと加速する。「なんだこの女じゃじゃ馬なないか!」この言葉が風にのり後方へ流される。ギアを上げる。心地よい加速感と背の高い彼女からみる港の景色がいつもと変わる。BAJACOのステップの上に立ち上がりBAJACOのサスペンションに体重を一気におろしぴょんぴょんと跳ねた。BAJACOも鹿児島からの長旅など気にもしていない様子だ。海が見える。港のコンテナ埠頭のコンテナをパイロンがわりにステップを踏みながらBAJACOの声を聞く。ちょっと派手にアクセルを開けてもお構いなしの様子でBAJACOはぐいぐいと私を乗せてコンテナの周りを走り抜けた。
燃料を入れていなかったことを忘れいた。陸送で積んできたバイクに燃料が入っている訳がない。慌てて近所のガソリンスタンドへ向かう。燃料を満タンに入れてリザーブからONに戻し再びデート再開だ。港から国道へでて隣の島へ遊びにきた。子供の頃400メートルを競った道路だ。懐かしいのでスタート地点から時計をにらみながら全開で加速する。ゴール。時計を見る。やはり早いと思っていたが250ccだ。タイムは伏せておくことにする。しかしBAJACOの加速感は時計では表せない速さがあるのだ。これは乗った人にしかわからない感動だ。BAJACOの顔であるヘッドライトを点灯する。BAJACOからおりてヘッドライトを確認しながらBAJACOの顔をゆっくりと眺めた。ぽつりと言葉がこぼれ落ちる「かわいい」と。私のなかで「かわいい」と「かっこいいい」は正義なのでこのBAJACOは正真正銘、私の正義なのだと感じた。その日、まだまだ帰りたくない二人は港の同じコンテナの周りをぐるぐると何周も回りながら会話を楽しんだ。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
fukumomo3_photo
コメント