「単気筒の衝動|XLR250BAJAと私の物語」第十一話:島の背に響く静かな呼吸

「単気筒の衝動|XLR250BAJAと私の物語」第十一話:島の背に響く静かな呼吸 BAJA
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この島には、心が深く落ち着く何かがある。

佐渡島の風景は、ただの自然の美しさにとどまらない。

過ぎた時間を懐かしくも鮮やかに思い出させるものがある。

BAJACOと共に走ったあの道、静かに流れる時の中で感じたこと。

そのすべてが、今も私の心に色濃く刻まれている。

「単気筒の衝動|XLR250BAJAと私の物語」

第十一話:島の背に響く静かな呼吸

 佐渡島は、少し冷えた空気が心地よい。私はまだ、海風とともに走ったあの道を思い返している。時間が静かに流れる中で、バイクの排気音だけが頼りのように響く。

その排気音が、どこか懐かしく、愛おしく感じるのはなぜだろう。特に、トップギアから無理やり立ち上がるとき、あの「トコトコトコ」という音。心地よいリズムのように、BAJACOが音を奏でる。無理に出す音ではなく、どこかしら自然な息遣いを感じる音が、心を落ち着かせてくれる。

海岸沿いを流すように走っていると、突然、空気が止まったような気がした。景色が一瞬静止し、目の前を飛ぶ大きな鳥が目に入った。その瞬間、思わず「あ、トキだ!」と声を出すが、それはすぐに「違う、サギだ」と気づく。確かに、白く優雅に羽ばたくその姿に、どこか馴染みのある印象を受けた。それでも、トキのことを思い浮かべる自分が少し恥ずかしくもあり、でも心からその景色が愛おしくも感じた。

「ニッポンを探そう。佐渡百選・二ツ亀」の看板が目に入った。観光名所としての顔も持ちながら、今日は人が少ない。静かな島の姿がそのまま心に落ち着きを与える。その中で、BAJACOと私だけの時間が流れていく。

私たちだけの空間。まるで昔付き合っていた同級生と一緒に旅をしているかのようだ。過ぎた時間に縛られることなく、ただ二人で島を歩き回る。どこか懐かしく、でも新しい発見が常にある。距離が縮まり、心が一緒に戻っていく。

この島に来るのは初めてのことだが、時間の流れがそれを感じさせない。まるで過去に戻ったかのように、ふとした瞬間にあの頃の気持ちが蘇る。あの頃の気持ち、あの頃の風、あの頃の私たちが、今ここにいるような錯覚を覚える。心が軽くなり、再び出会った気がした。

途中、二ツ亀の小道を辿りながら、BAJACOを引き寄せるように進んでいく。小さな島が見える場所まで行くと、そこで再び立ち止まり、彼女を見つめる。やっぱり、あの時と何一つ変わらず、かわいらしい。年を取ったとしても、何もかも変わらずにそこにいるBAJACO。その佇まいが、時間を越えて私を包み込む。

島の静けさに包まれながら、私たちは少しずつその景色を刻んでいく。日が落ちる頃、風が静かに収まり、空が次第に暗くなる。遠くの海の波の音が少しずつ遠のき、島の背に静かな呼吸だけが残る。

またひとつ、心の中に新たな風景が刻まれた。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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