「単気筒の衝動|XLR250BAJAと私の物語」第十二話:島に響く静かなリズム

「単気筒の衝動|XLR250BAJAと私の物語」第十二話:島に響く静かなリズム BAJA
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島に渡ってから、心の中にひとつのリズムが生まれた。

それは、風と同じ速さで鼓動し、やがて静けさに溶けていく。

エンジンをかけた瞬間、その音がまた私を過去へ連れていった。

「単気筒の衝動|XLR250BAJAと私の物語」

佐渡島海岸線の道

第十二話:島に響く静かなリズム

 佐渡島の春は、まだ少し冷たい風が心地よく頬をなでる。バイクに跨りながら、私は再びその静かなリズムを感じ取る。排気音が響き、風の音と交わるその瞬間、私の体とBAJACOはひとつになったような気がした。

島の道を進んでいくと、景色は一瞬一瞬が新たに広がり、どこか懐かしいものが顔を出す。トンネルを抜ける度に、バイクの排気音が変わるのを楽しみ、手元の微かな感覚を感じ取る。最初に感じたあの「トコトコトコ」という音も、今ではすっかり私の心の一部になっている。

海沿いを走りながら、目の前に広がる景色に思わず息を呑む。あの頃、十代の頃にバイクに乗り始めた時のことが、突然頭に浮かぶ。あの頃の軽やかな気持ちが、今、島の風景の中に戻ってきたようだ。

そして、立ち止まる。トンネルを抜けた先、目の前に広がる海の青と、空の青が交わる景色を見つめていると、あの頃と何も変わらない風景に包まれている自分に気づく。いくつもの年月が経ち、バイクにまたがる体は少しだけ重くなったが、心はあの頃と同じように自由だ。

その時、ふと空が静かに変わり、陽の光が柔らかく私の顔を照らした。空気が少し温かくなり、身体に染み込んでいく。私はただその静かな時間の中で、呼吸を合わせるように深く息を吸う。心が静まり、少しだけ懐かしい気持ちに包まれる。

そのまま、景色をゆっくりと刻むように進みながら、私はふと思う。この旅は、ただの移動ではなく、過去と現在が交わる儀式のようなものだと。時間が静かに流れる中で、私は新しい景色を記録し、心の中に新たな風景を刻んでいく。

島の背に響く静かな呼吸。それは、何も言わずにただ存在している音。少しずつ、遠くの波の音が静かに消えていく。その静けさの中で、私は心地よい余韻に包まれながら、再びBAJACOのアクセルを少しだけ多めに開ける。

そして、島の静けさが一層深まる中、少しずつ遠ざかる音と景色と共に、私は再びそのリズムに身を任せていく。
佐渡島の地図:経路と時間

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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