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赤く息づく網の上で、干しイカがゆっくり反る。
青い炎は低く、酒器の口に夜の匂いが集まる。
一口の北雪で肝がほどけ、舌に小さな火傷が残る。
今夜の後悔はただひとつ――もう少しだけ、飲みたかった。
「単気筒の衝動|XLR250BAJAと私の物語」

第二十話:干しイカ、炎、そして小さな後悔
真っ赤に燃えた網に、イカの丸干しをのせる。するめとは違う、ぬりゅっとした動きで、ゆっくり背をそらす。先っぽが焦げ始めるまで待つ。焦げはカリカリの合図。そこで網から上げ、歯を入れた瞬間に北雪を流し込む。くぅ、と喉の奥で音がひとつ転がり、肝がほどけて舌の上で暴れる。これだ。スルメとの違いは、ここにしかない。
二枚目。網はさらに赤く、のせた途端にイカが踊り出す。私は子どものように黙って見とれ、ほどよく色づいたところでまた上げて、また飲む。イカ二枚で一本が空く。言い訳は、特にない。ただ、この味は間違いなく酒飲みが作った味だと、誰にも聞こえない声で頷く。
北雪の空き瓶が転がる野営場のテーブル。その角には角瓶が待機している。しまったな、一升で買えばよかった。BAJACOが嫌がった、ということにしておく。ドラゴンフライのポンプを押しながら、片手で琥珀色を少しだけ注ぐ。ポンピングを途切れさせると落ち着かない性分で、バルブをわずかに締めて炎の背を撫でる。けれど後悔は、結局ひとつだ。今夜は日本酒を、もう少し飲みたかった。
【佐渡島 二日目 4月10日】PM20:48。
風は細り、網の赤が静かに退き、青い炎だけが息をしている。
私はノブを少し絞り、ありがとうと心で言って、夜に指先を置いた。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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